12B4A全段差動アンプ(11 最終特性と反省会

_DSF2831.jpg
ヒーターの明かりが綺麗です

12B4A_Amp.png
最終アンプ部回路図

12B4A_Pow.png
最終電源部回路図


仕上がり利得
Rch:5.74倍
Lch:5.77倍
出力管の組み合わせを変えて利得を揃えました。音量的にボリューム10時~12時くらいで丁度いいです。

周波数特性
freq_end.jpg
肩特性はFE-25-8のおかげでとても素直だと思います。
早くに減衰しているカーブはデジタルノイズ用のLPFをONにした場合です

方形波特性(8Ω抵抗負荷)
R01.png
Rch100Hz
L01k.png
Lch100Hz

R1k.png
Rch1kHz
L1k.png
Lch1kHz

R10k.png
Rch10kHz
L10k.png
Lch10kHz

R100k.png
Rch100kHz
L100k.png
Lch100kHz
周波数特性をしっかり測っているのであまり意味は持たないですがせっかく測ったので一応。上が入力方形波で下が出力。入力波形がやや崩れ気味なのはプローブとファンクションジェネレーターのマッチングが悪いだけなので気にしないで。

歪率特性(前回のそのままのデータ)
disRk.jpg
Rch
disLk.jpg
Lch

雑音特性
Rch:180μV
Lch:183μV
雑音特性は歪率の1kHzの値から算出した値です。


反省会
当初のテーマ
1)出力管は12B4A
ようやく10本あった12B4Aを使ってアンプを仕上げきりました。手に入れてから15年越しくらい。構想だけなら2年かな。予備球もあるししばらくこれがメインシステムです。

2)手元にある資材を最大限活用する
出力トランスは20年前くらいに買ったもの。部品もできるだけ手持ちのものをやりくりしました。それでも結構買わなきゃいけないものが多かったです。ケースが一番高くて次は電源トランス。その他あれやこれやと総額3万円くらいかかっちゃった。

3)長く使えるものをつくる
筐体内温度や出力管の動作点的には問題ないかな?
ケミコンもすべて105℃の長寿命品など(ニッケミKXJとか)を選んでみたりと、テーマに沿って高耐久とか(もし何かあっても入手が容易な)一般品を多用する方向で作成しました。

4)物理的な特性はできるだけ良く
測定技術が未熟なのであまり自信がない。この数値を信じるならなかなかのもの?この結果が大変よろしいとのことなら原典であるぺるけさんの設計が良いからでしょう。

聴感
バスブースト回路の有無は設計の最後まで悩みましたが、出来上がってみると十分な低音が出ています。12B4Aの内部抵抗の低さや出力トランスのおかげかな?試作当初はどこか落ち着かない音でしたが、実験や試聴を繰り返しているうちにこなれてきたのか、今はとても落ち着いてどっしりとした音になりました。ボーカルも明瞭、高音部の広がりもいい感じ。
ヘッドフォン出力部のアッテネータは4.7Ω+4.7Ωにしたけども、もう少し音量が下がる組み合わせでも良かったかなと感じます。
とにかく聴くのが楽しくて最近聞いていなかったCDを引っ張り出してきてみたりとちょっと寝不足気味です。眠っている父親所有のジャスのLPを奪って再生してみようかしら。

失敗
・興味本位でポリウレタン線を購入してみたけどハンダをはじいてダメダメ、ぺるけさんの言う通りただの銅針金がいちばん良い。ここまで実験でわかっていたのだけど本番でこれを取り違えてうわっ私はんだ付け下手すぎ?あ、これポリウレタン線じゃん・・・
リカバーが大変だったし熱をかけた半導体に影響がないかと心配でした。

・電源部の組み立ての際にFETのラグ穴を一個ずれたままはんだ付けしていて、気づいたときにどひゃーとなりました。通電試験前にじっくり確認したのが功を奏して事故が起きる前に気づけてよかったですけど、修正はなかなか大変でした。

・あるあるですけどドリルが滑ってケースのお肌に傷が。ショックですよね。他にもいくつか目立たない傷や、工作精度の悪さで穴位置がずれたりしています。ボール盤が欲しくなるけどこれを作るためだけだとコスパ悪いし・・・

・トグルスイッチは廻り止め穴設けず、付属の菊座金で大丈夫!丁寧なつもりで穴をあけると見栄えが悪くなります。

・抵抗の発熱は甘く見ないこと
カソード共通抵抗が片側4.3W程度発熱することを見越して20Wクラスのセメント抵抗2本ならぬるく行けるんじゃ?とデータシートとにらめっこしたものの実装したらやっぱり熱い!そりゃそうだ、大型抵抗だと熱が出ないとか物理法則に反するよね。
当初の配置だと熱がこもりそうだったのでできるだけそうならない位置に設計変更するはめに。穴もいっぱいあけることになりました。出力段のカソード抵抗電力が大きくなりがちな出力管の採用はぺるけさんのミニワッターにするなら色々考えないといけませんね。(そりゃそうでしょ!ミニワッターなんだもの普通はそこまで熱でないよ)

・トランスの角穴あけにリューターと切断砥石を用意してみたけれども結局ドリルで穴あけしてニッパで齧ってヤスリのほうが早かった。リューターはちびちびと細かい作業以外だめですね。大穴のコバ磨きにはめちゃくちゃ役に立ちましたけども。

いろいろと時間がかかりましたが満足行くモノになりました。
12B4Aはヒーターの明かりもよく見えるし小さくて可愛くて良い球だと思います。
今回の工作でちょっぴり疲れたのでもうしばらくはアンプづくりはしません。
と思いつつ次はDACでも作ろうかな?と考える自分が居ます。いやLPのためにイコライザを作る?

最後に、これを作成するにあたって初段回路のFETはバイアス特性が良く揃った選別ペアであることが前提になっています。これを自分で選別するには数百単位でFETを買い込まなくてはなりません。(それだけばらつきが大きいのです)そんな投資や手間をかけることなく、選別済みのものを頒布くださったぺるけ様とそのご家族に感謝いたしております。ありがとうございました。
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12B4A全段差動アンプ(10 改修と完成

なんだか微妙だったクロストークの向上を狙って信号線の取り回しを変えてみました。
Cross Talk
今回はWaveSpectraで測定。
反対側のチャンネルに1V(8Ω)を出力させて、測定側は入力をショート。おおよそ-80dBくらい確保できているのでオッケーかな。

前回うまく測れなかった歪率特性は、アマチュア向けレコーディングカードあったよなあと押し入れを漁るとM-audioのDELTA66が出てきた。これで入出力してやるとバッチリ!
disRk.jpg
Rch
disLk.jpg
Lch
3%歪みがだいたい2W程度、最低歪みは0.04%くらいかな?

筐体内温度
_DSF2823.jpg
室温:28.0℃
あっ!スイッチ周りの加工の際の傷が!
_DSF2821.jpg
電源部整流ダイオード~直後のケミコン付近:44.5℃(+16.5℃)
筐体内で一番熱で悲鳴を上げそうな整流直後のケミコン付近の温度を測定。ケミコンはすべて105℃品で組んでいるのでこのくらいなら大丈夫かな?

雑音特性
Rnois.jpg
Rch
Lnois.jpg
Lch
数値が良すぎるからなにか測定ミスしていそう。
ぺるけさんのサイトのトランジスタ式ミニワッター改修記事の中に、歪率特性から雑音を読み解く方法が載っていたのでこれを当てはめてみます。歪率の右下がりの小信号部分に注目して、Lchの1kHz歪率特性の測定の時、0.118Vでは率が0.15365、0.296Vで0.06298でした。(測定時の実測値読み)つまり、
0.118V×0.15365%=0.000181V=181μV
0.296V×0.06298%=0.000186V=186μV
これが残留雑音ということになります。Rchの1kHzでもほぼ同じ180μVくらいです。このアンプでは歪率の右下がりは周波数によってばらつきが生じているので周波数によって残留雑音が増えるとも言えそうです。ところでなぜこの領域で周波数によるばらつきが生じるのだろう?

さらにクロストークについてまで考えるとまず、雑音である180μVは1Vに対して-74.86dBほどになります。クロストークの周波数に依存しない領域であるグラフの水平な部分、例えば1kHzの値はL→Rが-78.42dB、その反対が-83.35dBですから・・・あれ?クロストークのほうが数字が低いなあ?どこか測定ミスしていそうですね。


底板は穴あけが億劫になってしまったのでパンチングメタルに補強材で済ませました。
思った以上にカソード抵抗が発熱するので排熱穴を増してみたりして完成です。
_DSF2827.jpg
小さい出力管に大きなトランスだと何が主役かわからないのでトランスはすべて筐体内に隠してみたら、これはこれで筐体が分厚くて野暮ったいような。

_DSF2826.jpg
ハラワタの一部
電源部は20Pラグで組みました。
あれやこれやと設計していくうちに初段周りはユニバーサル基板で、出力段は縦ラグで間に合わせることにしました。完成してから初段もラグで良かったなーと思ったり思わなかったり。しかしながらおかげで初段の2SK117はエポキシ接着剤で直に熱結合していますので多少は熱による安定性を確保できた?かな?
ケースはタカチのPOSシリーズ。トランス端子部のクリアランスは純正シャーシ板に金属スペーサーを噛ませて嵩上げしてあります。天板と底板はフリーにしてあるので板さえ外せば中身にアクセス可能にしました。欲張って蓋を開けずにバランス調整する設計もしたけどなんだかうまくないのでそれはボツ。あまりいじりすぎても調整トリマーが消耗するのでこのくらいでいいのかも。
負帰還素子周りはとっかえひっかえしたのでなんだか汚いね。

12B4A全段差動アンプ(9 調整のための特性測定

半完成まできました。
状態を確認すべく各種特性を測定しましょう。

・各電圧
B1:216.7V (アウトプットトランス給電)
B2:116.3V (初段給電)
B3:5.52V (カスコードトランジスタのベースバイアス)
C-:-4.86V (初段定電流源用)
ヒーター電圧:6.25V
カソード電圧:81.8V(R) 83.1V(L)
初段コレクタ電圧:65.4V
トランスPタップの対アース電圧:212.7V
トランスPタップからカソード電圧を引いて212.7-83.1=129.6Vがプレート電圧
負荷抵抗は27kΩなので116.3-65.4=50.9Vから50.9/27k=1.885mAが初段の定電流
カソード電圧からコレクタ電圧を引いて83.1-65.4=17.7Vが12B4Aのバイアス
各種電圧はほぼほぼ設計通りですね。

・オープンループゲイン(裸利得)
Rch:27.93 (28.92dB)
Lch:27.62 (28.82dB)

・負帰還
Rin:820Ω
Rnfb:5.1kΩ 
β:0.1385

・ループゲイン
Rch:3.87 (11.75dB)
Lch:3.83 (11.65dB)

・クローズドループゲイン(仕上がり利得)
Rch:5.67(15.07dB)
Lch:5.58(14.93dB)

・方形波特性
100hz.jpg
100Hz

1khz.jpg
1kHz

10khz.jpg
10kHz
結構リンギングが出ているので周波数特性がどうにかなっていそう

・周波数特性
ft.jpg
出力電圧1V(0.125W)
おーやっぱり!どうにかなってる。
100kHz~200kHzにかけて2dB弱の盛り上がりがあるので位相補正を行います。
ここできづいたのが、これってぺるけさんのベーシックアンプ三段化のそれと一緒じゃん?あちらは負帰還を-8dBに減らして330pFで手当していたなあ?このあたりの癖の出方は出力トランスと負帰還量でだいたい同じ雰囲気になるのかな?
負帰還抵抗変えてもいいけど、とりあえずはフィルムコンデンサで追い込んでみました。
手持ちの220pFがテスターで測定すると400pF位あるので、330pF(こちらも数値が大きい方にずれてた)と直列にして240pFとしてみたのが上のグラフLchに変なツノがあるもののRchは素直?なのでまずはこれで一旦完了。
-3dB落ちは両ch共に190kHz~200kHzの間くらい。

容量測定レンジ付きテスター(SANWA CD731a)で大きめの数字が出たフィルムコンデンサは大安売りの品でしたのであまり信用していませんでしたが、もう少し精度の高いフィルムコンコンデンサもいつも使いのテスターだと数値が高めに出ます。
テスターの容量測定の特にpFオーダーの部分は誤差が大きいようですね。あたりまえっちゃあたりまえ?
それでも相対的な容量の差を確認するだけならこれで十分かなと思います。


・方形波特性(再測定)
ho.jpg
10kHz
リンギングは残っているもののこのくらいで問題なしでしょう。

・雑音特性(全帯域)
Rch:1.67mV
Lch:1.52mV
反対側に1Vの正弦波を出力させて測定Chは入力ショートの測定、こんな方法で良いのかな?
フィルタがないので全帯域、更にはオシロで波形を取り込んで実効値をリードアウトした値なのでいまいち信頼に欠けそう。

・クロストーク特性
x.jpg
0dB=1V
-50dBも行かない感じ、実装が悪いのだろうなあ。
とりあえずヘッドホン端子を往復しているラインが一部抱かさっていたので離しておいた。
このヘッドフォン端子の近くにボリュームなどの入力系統の配線が接近していることから、
これが良くないのかも?ゆくゆくは改修したいところ。

・歪率特性
WaveGeneとWaveSpectraでの測定をしたものの、途中でサウンドカードがビジーになるのでなんとか測りきれた1kHzだけ。
disR.jpg
Rch(8Ω)

disL.jpg
Lch(8Ω)
全段差動っぽい弓なりカーブ。
1Wも出そうとすると歪みまくりになりそうだけど普段遣いではそこまで出さないので十分。

→歪率測定は測り方が悪かったです。
この次の記事で測り直した正しいと思われる値があります。
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