12B4A全段差動アンプ(8 組み始めています

部品も一通り揃って早速組み始めていますが
仕事などの合間に作業しているので進捗はさっぱりです。

ああしたいなーこうしたいなーと設計図を引いて考えていることが、実際に手を動かしてみると工具が足りなくてうまく行かなかったり技術が追いついていなくて失敗したりといろいろなイレギュラーが起きます。
失敗はどんなに準備して用心しても必ず起きますから、そのリカバーを落ち着いて上手にやるのが熟練者なんだと思います。
私は初心者ですが。

これまでに起きた一番大きな失敗はボリュームの廻り止め穴を開けた際に、φ3のドリルの歯が切れなくなってしまっているのに気づかず穴が大きく斜めになって見苦しくなったことでしょうか。
最初はうわ私下手すぎ?と思いましたが、すぐに気づいて新しいドリルの歯で別の穴をあけるととてもきれいでした。
ケチったつもりはなかったのですが、端材で試しておくとかしておけばよかったなと後悔。
使用予定より一回り大きなノブに付け替えれば隠れてしまうのでまあ・・・ですが、やっぱり気持ちはちょっと萎えちゃいますね。

そんなこんなで現在作成中です。
忘備録的な作成記ですのでこの次の記事ではほぼ完成していることになると思います。
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12B4A全段差動アンプ(7 気になること@高域ポール

部品も揃いつつあり、そろそろ楽しい作成タイムとなりそうです。
しかしかながら設計をしていて気になることもあります。高域ポールです。
使用するトランスFE-25-8は先人の記録を見ると-3dBが100kHzとなっています。

初段の出力インピーダンスはカスコードですから、2SK117の出力インピーダンスRoを2SC2482の約β倍したものなのでしょうか?
2sk117のRoを100kΩくらいとして10倍で1MΩとかになりますね・・・
実際ロードラインを見てもまっすぐ水平なわけですから、辻褄が合いそうですけどこれで良いのかな?
これと27kΩの並列ですので1M//27k=26.3k、出力管に発振止め抵抗1kが割り込んでいますので足し算して27kΩでしょうか。
どんなにカスコードでの内部抵抗が高くとも最終的には負荷抵抗へ収束しますので、カスコードでの正しい内部抵抗が不明ですがまあこんなものとしておきます。

出力管12B4AのCg-pは4.8pF、Cg-kが5.0pFで、増幅率は5.14倍でした。
これらから入力容量は(4.8p+0.5p)×(5.14+1)+5.0p=37.54pFです。
0.5p足したのは浮遊容量を見越してです。
27kと37.54pで形成されるローパスフィルタはfc=157kHzとなります。

出力トランスが100kHz、初段から出力段での時定数が157kHzですからかなり近いです。
負帰還をかけても安定するでしょうか?発振しちゃう?音に妙な癖が出る?
このあたりはこれ以上は実際に作成して測定してみないことにはわかりませんね。

→全く問題ありませんでした
2段直結増幅だし発振って事はまあないよね、負帰還をかけないで周波数特性を取るときに
オシロのリードアウトで入出力見た感じでは最高でも160度程度位相がずれる感じでした。
位相補正後は120~130度くらいだったかな。

12B4A全段差動アンプ(6 入力部LPF作成

寄り道をして入力側に取り付けるLPFを作成しました。
デジタルソースは可聴域外の高周波ノイズまみれで、スパッといらない領域を落としてやると音が良くなるのだそうです。
今回作成するアンプのソースはそれこそデジタルモノが多くなりそうですし、ON/OFFするスイッチを仕込めばいらない時はパススルーしておけばいいので。

RLC型でR=1.35kΩ、L=4.7mH、C=3300pFとしてfc= 40412.36Hzとなります。
解析にかけると10k~30kHz区間にごく僅かな盛り上がりが出そうですが果たして?

サクッと作成して特性を測定してみました。色違いは左右ch分です。
600Ωのオシレーターから1Vで入力し、出口の50kΩ負荷に現れた電圧を測定しています。
出力は電子電圧計が無いためデジタルオシロのリードアウトで読んだものです。
10Hz~1000Hzまでは3ポイントくらいしかプロットせず、逆に7kHzあたりからは細かめにプロットしています。
その上で多項式近似線でグラフとしました。
LPF.jpg
カットアウト周波数が予定よりもやや上ですが、まあこれで良しとします。

12B4A全段差動アンプ(5 部品調達

部品を仕入れますが、北海道の片田舎ですのですべて通販を利用します。
マルツで殆どの材料を、門田無線で真空管ソケットやボリュームなど、秋月電子でその他細々、ゼネラルトランスでは電源トランスを調達しました。
合わせてぺるけさんのサイトから選別半導体を頒布いただいております。
部品調達の段になって初段負荷抵抗をやっぱ27kΩにしよっかなーと気が変わって4.7k+4.3kの電圧ドロップは4.3k+4.3kに変更、43kと68kについては27kに変えました。

ケチな話ですがパーツリストを作ったりして買い漏らしがないようにしないと再度抵抗一本だけとかで注文すると送料が高くついてしまいます。
ちょっと前までは会社の近所に無線屋があってそこである程度の部品が揃ったのですが残念ながら閉店されてしまいました。

部品が全て揃うまではしばし掛かりそうですからその間にラグ板などのレイアウトを考えておきます。

12B4A全段差動アンプ(4 回路設計

ロードラインの設計から回路の全体をまとめました。
書いては消してを繰り返したのでたいへん汚い図ですが以下のとおりです。

12b4a_amp.jpg
電源部より216Vくらいの電圧を出力トランスへ給電します。
初段電源は108Vとしましたので216Vから108Vの差を埋める抵抗は、流したい電流が12mAほどであることから(216-108)/0.012=9000Ωとなり、E系列から9.1kΩとしたいところですが、25%のディレーティングも考えると4×(0.012^2×9000)=5W型以上を要求しますので、分割して4.7kと4.3kそれぞれ3W型とします。
初段へは左右4mAずつ取られて残りの4mAがZDへ流れ込みます。
4VのZDは5mA以上は流さないと良好な定電圧は得られませんが、6Vのものなら1mAから大丈夫、間の5.6Vはどうなんでしょう?
実験してみればいいですが手元にないですのでとりあえずで4mAとしました。
カスコードトランジスタのバイアス用のZDと初段間は102.4Vの差があり、4mAほど流れますので43kと68kを並列にして26.3kΩとしました。

全体の電圧配分は
初段カスコードバイアス5.6V
初段ドレイン(コレクタ)電圧60V
出力段バイアス17V
出力段プレート130V
出力トランス巻線ロス3.5Vくらい
全部足し算すると216.1Vでだいたい辻褄が合います。
というか辻褄が合うようにあれこれ悩みながら数字を当てはめたのです。
この計算過程がパズルを解くようでなかなか面白いのですが、もしかすると根本的なところで思い違いや計算間違いをしている可能性も・・・
その確かめは実際に作成してみて実測値で答え合わせするしか無いのかな?

初段のドレイン(カスコードなのでコレクタ?)電圧60Vと12B4Aのバイアス17Vを受けてカソード電圧は77Vとなります。
ロードラインから片側25mA×2=50mAを流したいですので、77/0.05=1540Ωとなり電力は3.85W、25%でディレーティングするとして4倍の15.4Wを要求してきます。
購入できそうなセメント抵抗で750Ωがありますからこれを直列にして1500Ωとした時は51.3mA流れるみたいです。
多少ずれても大丈夫だよね?ロードラインを見ても大きな差にはならないでしょうし、きっかりにするのは大変だし。

初段から出力段が直結ですから入力からのDCがあると出力段でDCバランスが崩れます。
これの防止で入力には0.47μFのコンデンサを挿入しています。
0.47μと560kで構成されるハイパスフィルタはFc=0.6Hz程度で、実際にはこれの10倍程度の低域を考慮する必要があるとどこかで読みました。(何処だったけ・・・たしかぺるけさんのサイトの設計関係の解説のはず)
10倍ですと6Hzで、10Hzくらいまでは帯域を得たいですので十分低い値なのだと思います。


電源部は以下の通り
12b4a_pw.jpg
先に書きますが図中のコンデンサの耐圧が足りていません。300Vとあるのは350Vが必要です。
180Vのセンタータップ式整流経て得られる電圧は180×1.28倍くらいとして230V。
MOS-FETでリプルの除去を行いますが、ほしい電源電圧は216V、初段定電流に-5ほどを割くとなると221VはFETのソース側でほしいです。
MOS-FETのバイアスが4V程度ですからゲートでは225Vとなります。
1.5MΩに流れる電流は230V/1.5MΩ=0.15mAで、整流電圧230Vとゲート側225Vの差5Vを埋める抵抗は5V/0.15mA=だいたい33kΩとなります。

リプルがどれだけ残るか計算してみます。
230Vの整流電圧を100μFで受けた場合で回路電流がだいたい114.6mAくらいならば100μF通過時点での残留リプルは整流電圧の1%ほどの2.3Vになります。
このあたりはぺるけさんのサイトに早見表があるのでそれを活用しました。
FETリプルフィルタは先の計算で求めた33kΩとゲートの下にある47μFで構成されます。
47μFのリアクタンスは1/2πfCからf=100Hzとして33.86Ωとなり、リプル除去率は33.86/(33.36+33000)=0.001025、2.3mAに除去率をかけて2.36mVが残留リプルとなります。

この2.36mVが今回の回路形式でいかに影響を及ぼすかは目下勉強中です。

→差動増幅自体の同相除去のおかげか聴感では全くハムはありません。
なので杞憂だったということです。

12B4A全段差動アンプ(3 ロードライン

ぺるけさんのMini-Wattersから「全段差動プッシュプル・ミニワッター」シリーズの回路を拝借して出力段の設計をします。
12B4Aの特性データを画像化してExcelに貼り付けてロードラインを引いたのがこちら

12b4a_amp_fn.jpg

緑の斜線は出力トランスFE-25-8のインピーダンスが8kΩですので差動回路の場合のセオリー通り半分の4kΩで引いたロードラインです。
もっと電流を流してもっと電圧をかければ出力は大きくなりそうですが、欲張りすぎても全体のバランスが取れませんのでこれで良しとします。
プレート電流は1管あたり25mA、プレート電圧は130Vとしました。
ロードライン中点は特性曲線の10~20Vのやや20V寄り・・・16~17Vくらいがバイアスとなるでしょう。
プレート損失はこれらの掛け算で130×0.025=3.25Wで、最大プレート損失5.5Wの60%くらいとなります。

差動プッシュプルでの最大出力はプレート電流(mA)^2×負荷インピーダンス(kΩ)÷2000から、25^2×8kΩ/2000=2.5Wとなります。
実際にはロスなどもありますのでこんなに出力は出ませんが、ミニワッターの定義(?)的なやつから考えれば大きめですね。

出力段での利得は12B4Aのμを6.5、内部抵抗が1030Ω、カソード側にバランス検出用のシャント抵抗を入れるのでそれも内部抵抗に足し算してμ(負荷インピーダンス/(内部抵抗+負荷インピーダンス+μ×シャント抵抗5Ω)より6.5×(4000/4000+1030+32.5)=5.14倍くらいでしょうか。
でもこれってメーカーが想定した理想状態での数値ですから、今回の条件では多少数値が変わるのでしょう。


初段の設計は2SK117を差動にして行います。
ですが、12B4Aのドライブを行うには耐圧50Vでは足りませんので2SC2482を載せてカスコード接続としました。

12b4a_amp_fa.jpg

ドレイン電流を2mAとして負荷抵抗は24kΩ、電源電圧は108Vくらいとしました。
24kΩの負荷抵抗ですとドレインに1mAの変化があれば左右24V程度のドライブができそうです。0.8mAなら20Vくらいでしょうか?
出力段のロードラインに戻って、バイアスは16か17Vくらいです。
17Vとして1.2倍程度の余裕と考えると20~21V程度あれば大丈夫そうです。
しかしながらグラフ的に下側は底付きまで30Vくらいのドライブを要求しそうでもあります。
2SK117にもう少し大きな負荷抵抗を抱かせれば余裕も出そうですが、手持ちの丁度いい抵抗が24kΩなこともあり、とりあえずはこれで作成してみることとします。

このときの2SK117のYfs(gm)がだいたい11mSくらいですので利得は11mS×24kΩ=264倍。
しかしながらソース間にバランス調整用で100Ωのトリマー抵抗が割りこむ予定なので、
中点50Ωとして考えると24000Ω/50Ω=480となり、(264×480)/(264+480)=170.3倍が初段利得となるでしょう。

ドレイン電圧を60V付近としたのは電源トランスの事情によるもので、ドレイン電圧はある程度自由に設計できそうです。
もっと低めにすれば他に電圧を回せますし、電源電圧が高いなら周囲の消費電力による発熱を気にしつつ高めの電圧配分にもできると思います。
今回は色々やりくりしていく中でこのあたりに落ち着きました。

全体の総合利得は初段170.3倍、出力段5.14倍で掛け算をして875.3倍ですが、出力トランスがありましたね。
FE-25-8は8kΩ巻線に仮にスピーカーを8Ωにつなぐとして8000:8=1000:1がインピーダンス比、巻線比はこの平方根ですから31.6:1といったところです。
更にトランスでのロスを10%くらい見込むと34.8:1であるならば、875.3/34.8=25.2倍が全体での裸利得となります。

負帰還についてはまだなんとなくでしか考えていませんが、仕上がり利得を5倍そこそこで考えたならば、帰還定数βは0.15程度で、ループゲインは25.2×0.15=3.78(11.5dB)かなーと妄想しています。
βが0.15程度の抵抗の組み合わせはβ=Rin/(Rin+Rnfb)からRnfb=4700ΩとRin=820Ωくらいの組み合わせでしょうか。

12B4A全段差動アンプ(2 テーマ

設計にあたってのテーマは以下の通りとしました
1)出力管は12B4A
2)手元にある資材を最大限活用する
3)長く使えるものをつくる
4)物理的な特性はできるだけ良く

1)出力管は12B4A
そもそも12B4Aありきで考え始めたプロジェクトなのでこれは曲げられません。
他、手元にアンプが組めそうな数がある真空管というと6L6GC、6188、6U8、6Z-P1あたりでどれも面白そうですけど浮気はしないことにします。

2)手元にある資材を最大限活用する
先に作成していた6188-6L6全段差動は父のライフスタイルの変化でヘッドフォンアンプに取って代わられ退役しておりました。
このアンプには出力トランスにFE-25-8が盛ってありますからこれを活用します。
小さな出力管に合わせてミニマムに作りたいのですが折角評価の高いトランスを遊ばせておくのも勿体ないですからね。
他にも色々普段いたずらをして遊んでいる時の端材っぽい部品が溜まっていますからこれらも活用してできるだけ在庫整理することとしましょう。

3)長く使えるものをつくる
折角ですから長く私のメインアンプとして活用できるものとしたいです。
12B4Aは最大定格で5.5W程度の電力を得られるようですが、球の寿命が伸びたらいいなあと欲張らずその8割以下くらいで動作させてやることとします。
また自分で回路定数を計算することは自己満足だけではなく、トラブルが起きたときにどこで何が起きたのか理解しやすいことが主目的です。

4)物理的な特性はできるだけ良く
3)とも重なるところもありますが、長く使いたいからこそ一定以上の特性は確保したいところです。
数字が全てではないですが、見栄といいますか、自己満足といいますかそういうのは大事かな。

12B4A全段差動アンプ(1はじまり

DSC_0696.jpg

12B4Aという真空管が手元に10本ほどありまして、いつかはアンプに仕立てたいなあと思いつつ15年くらいは経ってしまったと思います。
そのまま死蔵してしまうのは大変に申し訳ないことですから、いよいよ重い腰を上げようと思います。

実を言えば2年くらい前からどうしようかなと回路方式は色々考えていました。
単に真空管アンプと言っても様々な回路方式があるので何にしようか迷います。
ぺるけさんのサイト情熱の真空管から以前「Building My Very First Tube Amp講座」を読みつつ6188-6L6全段差動アンプを組んだことがありました。
誰が組んでも一定水準になるようにと考え抜かれた設計のおかげか、トラブルもなくとてもいいアンプが作成できてそのまま父親に奪われたというオチが付きます。

このサイトは発表されている回路の解説も細かいですし、出てくる音も私好みでした。
ということで今回もぺるけさんの発表された「Mini-Watters」の回路をお借りして、前回は丸コピーでしたから回路定数くらいは自分で考えて作成してみることとします。

私はアンプ回路についてはビギナーです。
オームの法則程度は理解できている?よ???くらいなものですので、発表されている回路図や設計データをもとに自分で計算し直して数値の辻褄があうかどうか確かめながら設計の意図を確かめつつ、作りたい物ならどうなるというのを当てはめていく作業となります。
どこか思い違いしているところなんかがあったらこっそり教えてくださいね。
プロフィール

Corsola

Author:Corsola
いつもきまぐれ

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